特許について

【書類名】特許願
【整理番号】SAN-P1401
【提出目】平成15年6月14目
【あて先】特許庁長官太田信一郎殿
【国際特許分類】E04D3/24 E04H.7/18
【発明者】 【住所又居所】広島県広島市中区西平塚町8番12号
【氏名】服部政博
【発明者】
【住所又居所】兵庫県神戸市灘区上野通8丁目9-15
【氏名】田中庸介
【特許出願人】
【住所又居所】広島県広島市中区西平塚町8番12号
【氏名又は名称】株式会杜三陽
【代理人】
【識別番号】100090837
【弁理士】
【氏名又は名称】片田欽也
【電話番号】082-263-4166
【手数料の表示】
【予納台帳番号】O04846
【納付金額】2100
【提出物件の目録】
【物件名】明細書 1
【物件名】図面 1
【物件名】要約書 1
【書類名】明細書
【発明の名称】建築物の外装構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体(2)の外面を縦方向に細長く複数に区分した形状の輸享に対応して配置され、躯体(2)に着脱可能に取付けられた吊子台座(13)と、隣接する吊子台座(13)間を覆うように配置され側縁部(5)又は側縁音(5)に沿う部位が縦方向に間隔を空けて着脱可能な固定部材(7,8,31)で吊子台座(13)に取付けられた外装板(4)と、吊子台座(13)に設けられ、両側外向きに突出し、端部側が内向きになるように屈曲した係合受部(19)を有する瓦棒通し吊子(17)と、端部側の先端が吊子台座(13)の外装版(4)の取付部位より外側になるように瓦棒通し吊子(17)に着脱可能に装着され、瓦棒通吊子の各係合受部(19)の屈曲部位に対応した部位で下方斜め内向に屈曲し、引き続いて端部側が下方斜め外向きになるように屈曲し、瓦棒通し吊子の係合受部(19)に弾性的に係合する係止部(22)を有する弾性板材からなる瓦棒化粧カバー(20)を備えていることを特徴とする建築物の外装構造。

【請求項2】
外装板(4)は、上向きL宇状に屈曲した側縁部(5)を有し、固定部材は、取付部(10)の一端からL字状に立ち上がる下向きU字状の保持部(11)を有する取付金具(7)と、取付金具を固定する止めネジ(8)を備えてなり、取付金具(7)の保持部(11)を外装板の側縁部(5)を挟持するように装着し、取付部(10)を止めネジ(8)で吊子台座(13)に固定して外装板(4)が取付けられている請求項1記載の建築物の外装構造。

【請求項3】
取付金具の取付部(10)を外装板(4)上から吊子台座(13)に取付けるとともに、隣接部位においては取付金具の取付部(10)を吊子台座(13)に直接取付けることにより、外装板(4)が吊子台座(13)に取り付けられている請求項2記載の建築物の外装構造。

【請求項4】
外装板の側縁部(5)に沿って止めネジ(8)より大径の取り付け穴(6)が形成され、外装板(4)と吊子台座(13)及び取付金具の取付部(10)の間に外装板の取付穴(6)を覆うように低摩擦フイルムからなる滑動補助シート(12)が設けられ、取付金具の取付部(10)が外装板(4)上から止めネジ(8)で吊子台座(13)に取付けられている請求項2記載の建築物の外装構造。

【請求項5】
躯体(2)の外面と外装板(4)間に断熱層(23)が設けられ、断熱層(23)は、逆爪(28)が形成された刺し爪(27)を有するスタイロックアンカー(26)を躯体(2)に接着し、スタイロックアンカー(26)に発泡樹脂ボードからなる断熱材(24)を突き刺して取付け、隣接する断熱材(24)問の隙間を防湿テープで覆うことにより形成されている請求項1記載の建築物の外装構造。

【請求項6】
吊子台座(13)は、その上面が断熱層(23)の外面と同一高さになるように躯体(2)に取付けられている請求項5記載の建築物の外装構造。

【請求項7】
吊子台座(13)は、外装板(4)の取付部位に沿って縦方向に延びる溝状の雨水樋(3O)を有している請求項1記載の建築物の外装構造。

【発明の詳細な説明】
(O001)

【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の外装構造に関し、言羊細には、汚泥処理用消化槽、飼料貯蔵槽、その他の貯蔵タンク、体育館等を始めとする建築物の外面を複数の縦長の外装板で被覆してなる外装構造に関する。
(OO02)

【従来の技術】
建築物においては、躯体を保護し、美観を確保するために、一般に外装が施されている。例えば、躯体がコンクリート製で、外面形状が円柱形、球形、卵形等の球面状に形成された汚泥処理用消化槽、飼料貯蔵槽、その他の貯蔵タンク、体育館等の建築物については、躯体を保護し、美観を確保するとともに、外気温度の影響を防止するために、躯体の外面を断熱材で被覆して断熱層を形成し、躯体の外面を縦方向に細長く複数に区分した形状に対応する鋼板等の金属薄板からなる複数の外装板を断熱層を被覆するように取付けた外装構造が提案されている。

【0003】
この外装構造において、建築物の外面を縦方向に細長く複数に区分した形状の輪郭に対応して吊子台座(以下、台座という)を取付け、両側外方に下向きU字状の側縁係合部を有する上向きコ宇状の瓦棒通し吊子(以下、吊子という)を台座上に重ねて取付け、外装板のL字状の側縁部を吊子の側縁係合部に係止して取付けた後、両側内方に上向きU字状の側縁係合部を有する下向きコ字状の瓦棒化粧カバー(以下、化粧カバーという)を吊子に被せ、化粧カバーの側縁係合部を吊子の側縁係合部に埋め込むことにより、外装板の側縁部を圧着挟持して固定してなるものがある(例えば、特許文献1参照)。
(OO04)

【特許文献1】
特開平1-102162号公報(第2-3頁、第2-4図)
(OO05)

【発明が解決しようとする課題】
前記従来の外装構造は、一吊子の下向きU宇状の側縁係合部に外装板のL字状の側縁部を嵌め込んだ後、さらに化粧カバーの上向きU字状の側縁係合部を嵌め込むことにより、外装板の側縁部が圧着挟持して固定されていることから、次の問題点がある。外装板の側縁部が縦方向の全体に亘って吊子と化粧カバーで密封されるため、強風時には外装板の内外気圧に大きな差が生じ、風圧で外装板が変形し、またその側縁部がずれて取付けが外れる恐れがある。 気温変化に伴う外装板と吊子、化粧カバー及び台座との熱伸縮差により、外装板が変形し、またその側縁部がずれて取付けが外れる恐れがある。変形、離脱、その他により損傷した外装板を交換する場合、先ず化粧カバーを取外すが、化粧カバーの上向きU字状の側縁係合部が吊子の下向きU字状の側縁係合部に嵌め込んで係止されていることから、化粧カバーの取外しが困難であり、また化粧カバー及び吊子の側縁係合部を変形させる恐れがある。さらに、隣接する外装板の側縁部の固定を同時に解除することになることから、隣接する外装板の側縁部等を損傷させる恐れがある。 その結果、所要の外装板を交換するのみではなく、隣接する外装板、化粧カバー及び吊子をも交換せざるを得ず、いわゆる部分補修が困難である。

【OO06】
また、前記従来の外装構造は、躯体の外面に断熱層が設けられているが、断熱層は、公知の方法、例えば発泡樹脂からなる断熱材の吹き付け、発泡樹脂ボードからなる断熱材の接着剤による取付け等により行われている。そのため、断熱材の全面が躯体に一体に取付けられている。ところが、断熱材と躯体の線膨張率が 大きく異なり、気温変化により大きな熱伸縮差が生じるため、断熱材が断裂し、断熱層としての機能を長期間維持し難いという問題点がある。

【OO07】
本発明は、前記従来の問題点を解消すべくなされたものであり、その課題は、風圧又は気温変化による外装板の変形、離脱等を抑制するとともに、部分補修を簡便になし得る建築物の外装構造を提供することにある。また、気温変化による断熱材の断裂を抑制し、断熱層の耐久性を確保し得る建築物の外装構造を提供することにある。

【OO08】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明では、外装板を台座に直接取付けることにより、吊子及び化粧カバーの 熱変形の影響を受けないようになっている。外装板の側縁部又は側縁部に沿う部位を縦方向に間隔を空けて 着脱可能な固定部材で取付けることにより、強風時における外装板の内外気圧差を減少し、風圧による変形、 離脱等を抑制し得るようになっている。吊子が、両側外向きに突出し、端部側が内向きになるように屈曲した係合受部を有し、化粧カバー.が、吊子の係合受部の屈曲部位に対応する部位で下方斜め内向きに屈曲し、引き続いて端部側が下方斜め外向きになるように屈曲し、吊子の係合受部に弾性的に係合する係止部を有することにより、化粧カバーの着脱を円滑になし得るようになっている。

【OO09】
すなわち、本発明は、躯体の外面を縦方向に細長く複数に区分した形状の輸郭に対応して配置され、躯体に着脱可能に固定された台座と、隣接する台座間を覆うように配置され、側縁部又は側縁部に沿う部位が縦方向に間隔を空けて着脱可能な固定部材で台座に取付けられた外装板と、台座上に設けられ、両側外向きに突出し、端部側が内向きになるように屈曲した係合受部を有する吊子と、端部側の先端が台座の外装板の取付部位より外側になるように着脱可能に装着され、吊子の係合受部の屈曲部位に対応する部位で下方斜め内向きに屈曲し、引き続いて端部側が下方斜め外向きになるように屈曲し、吊子の係合受部に弾性的に係合する係止部を有する弾性板材からなる化粧カバーを備えてなることを特徴としている。

【OO10】
外装板は、側縁部が上向きL字状に屈曲したものでもよい。その際、固定部材は、取付部の一端からL字状に立ち上がる下向きU宇状の保持部を有する取付金具と、取付金具を固定する止めネジを備えてなり、取付金具の保持部を外装板の側縁部を挟持するように装着し、取付部を止めネジで台座に固定して外装板を取付けることが好ましい。取付金具の取付部を外装板上から台座に取付けるとともに、隣接部位においては取付金具の取付部を台座に直接取付けることにより、外装版を取付けてもよい。項支付金具の取付部を外装板上から止めネジで台座に取り付ける場合には、外装板の側縁部に沿って止めネジより大径の取付穴を形成し、列装板と台座及び取付金具の取付部の間に外装板の取付穴を覆うように低摩擦フイルムからなる滑動補助シートを諜けることが好ましい。

【OO11】
また、本発明では、躯体の外面と外装板間に断熱層が設けられていてもよい。その際、断熱層は、逆爪が形成された刺し爪を有する スタイロックアンカーを躯体に接着し、このスタイロックアンカーに発泡樹脂ボードからなる断熱材を突さ刺して取付け、隣接する断熱材間の隙間を防湿テープで覆うことにより形成されていることが好ましい。台座は、その上面が断熱層の外面と同一高さになるように躯体に取付けられていてもよく、台座が溝型材からなる場合には溝内に断熱材が装着されていてもよい。また、台座は、外装板の取付部位に沿って縦方向に延びる溝状の雨水樋が形成されていてもよい。

【OO12】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1~8は、第1実施の形態の概念的な説明図である。図1~8において、1は建築物である汚泥処理用消化槽、2は躯体である。躯体2は、コンクリート製で、その全体形状が図2に示すようにほぼ卵形の球面状に形成されている。3は、外装で、躯体2の外面に後述する断熱層23を設け、この断熱層23を複数の外装板4で被覆し、躯体2を保護し、美観を確保するとともに、保温するようになっている。

(0013)
外装板4は、縦方向の上端部と下端部が公知の方法により縦方向に緊張して取付けられ、両側縁部5が後述する台座13に取付金具7と止めネジ8からなる固定部材で取付けられている。外装板4は、鋼板等の金属薄板からなり、図2に示すように、躯体2の外面を縦方向に細長く複数に区分した形状に対応して形成され、図1、図3、図4及び図8に示すように、側縁部5が上向きL字状に屈曲され、縦方向における上端から下端に至るまで、すなわち全長に亘って幅方向に延びる短寸法の折曲部4aと長寸法の折曲部4bが交互に形成されている。これらの折曲部4a,4bは、短寸法の折曲部4aと長寸法の折曲部4bが対になり、波模様又は瓦模様を模擬表示することになる。また、側縁部5に沿う部位には、図5、図6に示すように、止めネジ8より大径の取付穴6が縦方向に間隔を空けて複数形成されている。なお、外装板4は、側縁部5が折り曲げの無い平坦なもの、すなわち縁無しでもよく、各折曲部4a,4bの無い平板でもよい。

(0014)
取付金具7は、止めネジ挿入孔9を有する平坦な取付部10と、取付部10の一端からL字状に立ち上がる下向きU字状の保持部11を有する金属板からなり、保持部11を外装板の側縁部5を挟持するように装着し、取付部10を止めネジ8で台座13に固定するようになっている。すなわち、取付金具7による外装板の側縁部5の固定は、図4、図5及び図6に示すように、外装板の取付穴6の部位における表裏両面、すなわち台座13の側及び取付金具7の側に低摩擦フイルムである超高分子量ポリエチレンテープからなる滑動補助シート12を装着し、取付金具の保持部11を外装板の側縁部5を挟持するように装着し、取付部10を滑動補助シート12上に載置して止めネジ8で取付けることにより行われている。そして、これらの中間の1個所において、図1において右側の外装板4に対して実線で示し、図6に点線で示すように、取付金具の取付部10を台座1三に直接載置して取付けている。すなわち、取付部10を外装板4と台座13に崖接載直しての取付を交互に行っている。なお、混在させて取付けてもよく、ま六前記いずれか一方のみで取付けてもよい。外装板4上から取付ける取付金具7に、図6に実線で示すように、台座13に直接載置するものより外装板4及び滑重補助シート12の厚味に相当して保持部11の高さが低く設定されたものが好ましく、外装板4の浮き上がり方向、縦方向及び幅方向の拘束状態を台座13に直接載置するものとほぼ同一に設定し得る。滑動補助シート12は、摩擦係数が小さく、フイノレム状の薄い素材からなるものであればよく、外装板4上から取付金具7を取付けた場合における外装板4の取付金具7及び台座13に対する移動を僅かに許容するとともに、取付金具7の取付部位の防水をなし得る。なお、滑重補助シート12は、台座13、外装板4及び取付金具7のいずれにも固定されていないが、外装板4の表側については取付部10の裏面に接着剤により予め固定されていてもよい。

【O015】
台座13は、金属板からなる下向きコ字状の型材で、上面の両側が外装板4の取付部位になっている。幅方向中央には、図1及び図4に示すように・縦方向に間隔を空けてボルト挿入孔H1が設けられ、これらのボルト挿入孔H1を予め断熱層23を貫通して躯体2に打ち込まれた複数のアンカーボルト14に挿通し、下面が断熱層23の外面に接近又は接触した位置になるように下部ナット15て高さ調節し、上部ナット16を締め付けて固定されている。アンカーボルト14は、躯体2の外面を縦方向に細長く複数に区分した形状の輸郭に沿って間隔を空けて配置されており、台座13は、躯体2の外面を縦方向に細長く複数に区分した形状の輸郭に対応して配置されることになる。なお、台座13の形状は、剛性が確保されるならば平板等の他の形状でもよい。

【O016】
17は、金属板からなる吊子で、図1に示すように、上向きコ字状の本体11の両側上端から対称に下方斜め外向きに突出し、端部側が下方斜め内向きになそように屈曲した係合受部19を備え、本体18の幅方向中央に形成されたボルト挿入孔H2をアンカーボルト14に挿通し、台座13に重ねて上部ナット16で固定されている。係合受部19は、台座13の幅の半分程度に相当する寸法に設定され、台座13に取付けられた外装板の側縁部5、いいかえれば外装板4の取付部位の上方を覆うようになっているが、外装板の側縁部5の上方より内側でもよい。なお、係合受部19の取付位置は、本体18の上端よりも下方から突出して形成されてもよい。係合受部19の上面は、下方斜め外向きであることが好ましいが、水平面等の他の形状でもよい。本体18の形状は、他の形状でもよい。

【O017】
20は、金属薄板からなる化粧カバーで、吊子の本体ユ8より幅広で平坦な基板部21の両側から吊子の各係合受部19の屈曲部位に対応した部位で下方斜め内向きに屈曲し、引き続いて端部側が下方斜め外向きになるように屈曲した係止部22を備え、各係止部22が吊子の各係合受部19に弾性的に係合し、端部側が外装板の側縁部5を覆うように吊子17に装着されている。化粧カバー20の寸法は、基板部21の内面が吊子の本体18の上端に当接し、係止部22の端部側の先端が外装板の側縁部5より外側で、外装板4の表面に接触する程度に近接するように設定されている。係止部22の角度は、吊子の係合受部19の角度より幾分大きく設定されているが、少なくとも吊子の各係合受部19の屈曲部位に係合するようになっていれぱよい。係止部22の端部側の先端は、円形断面に屈曲されているが、化粧カバー20の装着時に外装板4の表面に滑らかに接触するようになっていればよく、例えば端面が面取り又は樹脂等の低摩擦材で被覆されていてもよい。基板部21は、その内面が吊子の本体18の上端から離れていてもよい。基板部21の断面形状は、凹状又は凸状の平面又は曲面のいずれの形状でもよく、また吊子の本体18より幅狭でもよい。

【O018】
断熱層23は、図7に示すように、躯体2の外面に防水材であるプライマー(図示せず)を塗布した後、逆爪一28が形成された4個の刺し爪27を有する複数個のスタイロックアンカー26を躯体2に接着し、これらのスタイロックアンカー26に発泡樹脂ボードからなる断熱材24を突き刺して取付け、隣接する断熱材24間の隙間を防湿テープ(図示せず)で覆うことにより形成されている。発泡樹脂ボードは、防水シート25であるアノレミ箔ポリエステノレ積層フイルムで被覆された硬質ポリウレタンフォームのボードである。断熱層23は、複数の断熱材24がそれぞれ複数個所に取付けられたスタイロックアンカー26で躯体2に取付けられていることから、気温変化による断熱材24の躯体2との熱伸縮差がスタイロックアンカー26で吸収され、断熱材24の断裂が抑制されるため、保温機能が長期間維持される。なお、断熱材24は、他の発泡樹脂からなるものでもよく、公知のように発泡樹脂からなる断熱材を吹き付けにより被覆し、又は発泡樹脂ボードの全面を接着剤で躯体2に取付けてもよい。スタイロックアンカー26は、刺し爪27が円形の基板29の外周の4個所に立設されているが、基板29の中央に1個立設されたものでもよい。

【O019】
本実施の形態の外装3は、前記のように構成されており、その作用等を施工作業及び補修作業とともに次に説明する。外装3の施工作業は、先ず断熱材24を躯体2の外面に複数個のスニタイロックアンカー26で取付けて断熱層23を形成し、アンカーボルト14を躯体2の外面を縦方向に細長く複数に区分した形状の輪郭に沿って間隔を空けて打ち込む。このアンカーボルト14に台座13のボルト挿入孔H1を挿通し、台座13の下面が断熱層23の外面に接触する程度に下部ナット15で高さ調節し、上部ナット16を締め付けて仮固定する。次いで、外装板4を隣接する一対の台座13間を覆うように配置し、外装板4の縦方向の上端側又は下端側の一方を公知の方法により躯体2に固定し・他端を引張つて躯体2に固定し、外装板4を縦方向に緊張させて取付ける。そして、外装板の各側縁部5をそれぞれ対応する各台座13の上面に取付金具7で取付ける。取付金具7による取付けは、前記したように、外装板の取付穴6の部位における表裏両面にそれぞれ矩形の滑動補助シート12を装着し、取付金具の保持部11を外装板の側縁部5に係合し、表側の滑動補助シート12上に取付金具の取付部10を載せ、この取付部10を止めネジ8により締め付けて固定する。そして、外装板4の隣接する取付穴6の中間の部位において取付金具の保持部11を外装板の側縁部5に係合し、取付部10を台座13に止めネジ8で直接固定する。なお、外装板4を縦方向に緊張させて取付ける工程と取付金具7で取付ける工程は、逆順でもよく、その際には取付金具7による取付けは止めネジ8を軽く締付け、縦方向に緊張させた後に所定の締付けを行う。

【O020】
同様にして隣接する外装板4をも取付けた後、アンカーボルト14の上部ナット16を取外し、吊子17のボルト挿入孔H2を挿通し、上部ナット16を締付けて吊子17を台座13に重ねて取付ける。これにより、外装板の側縁部5が隣接する外装板の側縁部5とともに吊子の係合受部19で覆われることになる。次いで、化粧カバー20を吊子17に被せ、縦方向における上端側又は下端側を押付け、押付ける部位における化粧カバーの係止部22を吊子の係合受部19に係合させ、押付ける部位を縦方向における他端側に順次移動し、全ての部位において係止部22を係合受部19に係合させる。その際、化粧カバー20を押付けることにより、係止部22の端部側の下方斜め外向きの面が係合受部19の屈曲部位の近くに当接しながら滑って押し広げられる。次いで、係止部22の外向きの屈曲部位が係合受部19の屈曲部位を通過した後に係止部22の下方斜め内向きの面が係合受部19の屈曲部位に当接しながら押し広げられ、係止部22の内向きの屈曲部位が係合受部19の屈曲部位に合致した時に、係止部22が自身の弾性カで閉じて係合受部19の下方斜め内向きの面に当接する。略同時に・基板部21が吊子の本体18の上端に当接する。これにより、化粧カバー20は、吊子17を覆うように弾性的に装着され、図1に示すように、基板部21と係止部22の下方斜め内向きの部位で吊子の係合受部19を弾性的に挟持し、がたつきがないように装着される。また、係止部22の端部側の先端が外装板の側縁部50の外側において外装板4の表面に接触する程度に近接して装着される。以上により、建築物1である汚泥処理用消化槽の外装3は、図2に示すように、縦方向に細長い外装板4と化粧カバー20が交互に配置され、躯体2の形状に対応した卵形に形成される。そして、外装板4の縦方向における上端から下端に至るまで幅方向の短寸法の折曲部4aと長寸法の折曲部4bが形成されていることから、外装板4が瓦模様を表し、化粧カバー20が瓦棒を表し、いわゆる瓦棒葺の構造になる。

【O021】
補修作業については、例えば損傷した1枚の外装板4を交換する場合、外装版の両側縁部5を覆う各化粧カバー20を取外し、上部ナット16を取外して吊子17を取外し、取付金具7による固定及び縦方向の緊張固定を解除し、外装板5を取外す。その際、化粧カバー20の取外しは、先ず縦方向の上端又は下端における係止部22の端部側を押し広げながら持ち上げて吊子の係合受部19から離脱させる。係止部22の端部側を押し広げることにより、下方斜め内向きの面が係合受部19の下方斜め内向きの面から離れ、持ち上げることにより係合受部19の屈曲部位に当接して押し広げられ、係止部22の下方斜め外向きの屈曲部位が係合受部19の屈曲部位に当接し、一端側における係止部22が係合受部19から離脱される。次に、持ち上げる部位を縦方向の他端側に移動するが、既に係止部22の下方斜め外向きの屈曲部位が係合受部19の屈曲部位に当接した状態にあるため、持ち上げることにより係止部22が係合受部19から容易に離脱される。以後、同様にして持ち上げることにより、化粧カバー20の全長に亘って係止部22が係合受部19から離脱される。以上のように、係止部22の離脱作業を小さな力で無理なくなし得るため、化粧カバー20自身、吊子17及び隣接する外装板4を損傷させることなく行い得る。そして、所定の外装板4を取外した後は、施工作業に従って新しい外装板4を台座13に取付け、吊子17及び化粧カバー20を順次取付けて補修を終了する。

【O022】
本実施の形態によれぱ、外装板4が縦方向に間隔を空けた複数個所で台座13に取付けられ、しかも幅方向の折曲部4a,4bを有していることから、外装板の側縁部5と台座13間に間隙が設けられ、外装板4の内外が連通しているため、強風時における外装板4の内外気圧差が小さく、風圧による外装板4の変形が抑制される。また、気温変化による縦方向における外装板4と台座13の熱伸締差が、外装板の折曲部4a,4bでも吸収されるため、外装板4の熱変形が支障のない程度に抑制される。化粧カバーの係止部22の先端が外装板4の表面に近接して覆うため、飛散する雨水の化粧カバー20内への侵入を抑制し得る。しかも、外装板の側縁部5がL宇状に形成されていることから、外装板4と台座13の隙間からの雨水の侵入を防止し得る。

【O023】
なお、本実施の形態において、吊子の係合受部19の寸法が外装板4の取付部位より内側に設定されている場合には、吊子17を台座13に取付けた状態で外装板4の取付・取外作業ができるため、施工作業及び補修作業を簡便かっ迅速になし得る。すなわち、施工作業時には、台座13をアンカーボルト14に装着し、吊子17を重ねて装着し、上部ナット16を締め付けて固定した後に外装板4を取付けることができ、台座13を仮固定する手間を省略し得る。また、補修作業時には、化粧カバー20を取外すのみで損傷した外装板4を取外し、新しい外装板4を装着することができ、吊子17の取外・取付を省略し得る。

【O024】
図9及び図10は、第2実施の形態の概念的な説明図である。図9及び図10において、図1~8におけると同一の符号は同一の機能部材を意味している。第2実施の形態は、台座13の形状、外装板4の形状、外装板4の取付構造及び吊子の係合受部19の形状の一4点について第1実施の形態とは相違しており、これらの相違点を中心に以下に説明する。台座13の形状は、全体として下向きコ字状で、上面両側の外装板4の取付部位に沿って縦方向に上向きコ字状の雨水樋30が形成され、外装板4の取付部位を越えて流入する雨水を排出するようになっている。外装板4の形状は、躯体2の外面を縦方向に細長く複数に区分した形状に対応して形成され、縦方向における上端から下端に至るまで、すなわち全長に亘って図10に示すように幅方向に折り曲げられた短寸法の折曲部4aと長寸法の折曲部4bが交互に形成されているが、側縁部5が第1実施の形態のように上向きL宇状に折り曲げられてなく平坦、すなわち縁無しになっている。そして、外装板4の取付けは、側縁部に沿って縦方向に間隔を空けて止めネジ8と座金31からなる固定部材で台座13に固定されている。なお、外装板4の側縁部に止めネジ8より大径の取付穴を形成し、表裏両面に滑動補助シートを装着して取付けてもよく、気温変化時における外装板4の熱変形をさらに抑制し得る。吊子の係合受部19の形状は、端部側がほぼ水平で内向きになるように屈曲されている。これにより、化粧カバー20の装着状態においては、係止部22の下方斜め内向きの屈曲部位及びその付近が係合受部19の屈曲部位に弾性的に係合し、吊子17に装着される。また、吊子の係合受部19と台座13の上面との上下間隔が大きく設定されることから、吊子17を台座13に取付けた状態で外装板4の事付・取外作業をなし得るため、外装3の施工作業及び補修作業を簡便かっ迅速になし得る。

【O025】
図11は、第3実施の形態の概念的な説明図である。図11において、図1-8におけると同一の符号は同一の機能部材を意味している。第3実施の形態は、台座13と吊子17の形状と構造、外装板4の形状、外装板4の取付構造及び化粧カバー20の形状の4点について第1実施の形態と相違しており、これらの布違点を中心に以下に説明する。台座13と吊子17は、金属板を折り曲げて一体に形成されている。台座13は、扁平な上向きC字状に形成され、吊子17は、台座13の各上端に立設され、図11に示すように左右一対の係合受部19を有している。係合受部19は、第2実施の形態におけると同様に端部側が水平内向きになるように屈曲しており、外装板4の取付・取外作業を簡便になし得る。なお、係合受部19は、台座13の上面との上下間隔が外装板4を固定する止めネジ8等を操作し得る空間が確保される程度に設定されていれぱよく、また台座13の上面両側における外装板4の取付部位より内側になる寸法に設定されていてもよい。外装板4の形状及び取付けは、第2実施の形態におけると同様に、縁無しで、止めネジ8と座金31からなる固定部材で台座13に固定するようになっている。化粧カバー20の形状は、基板部21が凸状の曲面形状で、吊子の本体18上端から離れるように形成されており、第2実施の形態と同様に係止部22の下方斜め内向きの屈曲部位及びその付近が係合受部19の屈曲部位に弾性的に係合し、吊子17に装着される。なお、第3実施の形態において、縁無しの外装板4が採用されているが、第1実施の形態におけると同様にL字状の側縁部5を有する外装板4でもよい。第3実施の形態によれば、台座13と吊子17が一体に形成されていることから、部品点数が少なくなり、それだけ施工作業性に優れている。

【O026】
【発明の効果】
本発明によれば、外装板の側縁部又は側縁部に沿う部位が縦方向に間隔を空けた複数個所で着脱可能な固定部材で台座に固定されていることから、強風時における外装板の内外気圧差が従来よりも小さくなるため、風圧による外装板の変形、離脱が抑制される。化粧カバーが吊子の係合受部の屈曲部位に対応した部位で内向きに屈曲し、引き続いて端部側が下方斜め外向きになるように屈曲した係止部を有していることから、吊子に簡便に装着し得る。化粧カバーの取外し時には、縦方向の一端において一側又は両側の係止部を押し広げて係合受部から離脱させ、その後離脱した一端から順次持上げることにより他の部位の係止部を係合受部から離脱させ得ることから、化粧カバー白身、吊子及び隣接の外装板等を損傷させることがなく、円滑に取外し得る。その結果、損傷した外装板の交換時には、化粧カバー又は吊子をも取外すが、化粧カバー、吊子を隣接する交換不要の外装板に影響を与えることなく取付け、取外し得ることから、損傷した外装板のみを簡便に交換することができ、外装板の部分補修が可能になった。以上の他、次の効果をも奏し得る。

(O027)
外装板が台座に直接取付けられていることから、気温変化時に台座との熱伸縮差による熱変形を生じるが、従来のように吊子及び化粧カバーとの熱伸縮差の影響を受けないため、外装板の熱変形は支障の無い程度に抑制される。特に、取付部の一端からL字状に立ち上がる下向きU字状の保持部を備えた取付金具で外装板を取付けた場合には、外装板が台座に対して縦方向において強く拘束されず僅かに移動可能であるため、外装板と台座の熱伸縮差を吸収し、外装板の縦方向の熱変形を抑制し得る。また、幅方向においては、縦方向におけるよりもはるかに熱伸縮差が小さく、しかも僅かに移動可能であるとともに、外装板の縦方向において間隔を空けて固定されていることから、外装板のL字状の側縁部が多少弾性変形することと併せて、前記熱伸縮差を吸収し、外装板の幅方向の熱変形を抑制し得る。

【0028】
前記取付金具を外装板上から取付ける場合には、外装板の浮上りをより確実に抑制し得る。そして、外装板と台座及び取付金具の取付部の間に滑動補助シートを設けた場合には、気温変化による熱伸縮差により外装板が縦方向及び幅方向において台座及び取付金具に対して相対的に移動し易く、各方向における外装板の熱変形を抑制し得る。

【0029】
断熱層が躯体に接着されたスタイロックアンカーに発泡樹脂ボードからなる断熱材を突き刺して形成されている場合には、気温変化による断熱材と躯体の熱伸縮差がスタイロックアンカーで吸収されるため、断熱材の断裂が抑制され、断熱層の機能が長期間維持される。また、建築物を解体する際には断熱材を躯体から簡単に取外し得るため、躯体の解体前に断熱材と躯体を予め分別できる。その結果、外装板、化粧カバー、吊子及び台座が容易に分解可能であることと併せ、解体による廃材の分別収集を簡便に行うことができ、環境対策に貢献し得る。

【0030】
台座の上面が断熱層の外面と同一高さになるように躯体に固定されている場合には、外装板を断熱層に接近して取付けることができ、断熱層が外装板の支持部材として働くことから、強風時における外装板の変形を抑制し得る。台座が外装板の取付部位に沿って縦方向に延びる溝状の雨水樋を有している場合には、側縁部が平坦な、すなわち縁無しの外装板を使用する場合であっても外装板と台座間の間隙からの雨水の侵入を抑制し得る。

【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施の形態の概念的な説明図で、図3のA-A線に沿う拡大断面図である。

【図2】
同じく、全体を示す側面図である。

【図3】
同じく、外装板の取付構造を示す一部を破断した斜視図である。

【図4】
同じく、外装板の取付構造を示す分解斜視図である。

【図5】
同じく、外装板の取付金具による取付構造を示す平面図である。

【図6】
同じく、図5のB-B線に沿う断面図である。

【図7】
同じく、断熱材の取付構造の説明図である。

【図8】
同じく、L字状の側縁部を有する外装板の形状の概念的な縦断面図である。

【図9】
本発明の第2実施の形態の概念的な説明図で、図1に対応した断面図である。

【図10】
同じく、平坦な側縁部を有する外装板の形状の概念的な縦断面図である。

【図11】
本発明の第・実施の形態の概念的な説明図で、図1に対応した断面図である。

【符号の説明】
1建築物2躯体3外装4外装板5外装板の側縁蔀
6取付穴7取付金具8止めネジ10取付金具の取付蔀
11取付金具の保持部12滑動補助シート
13台座(吊子台座)17吊子(瓦棒通し吊子)
18吊子の本体19吊子の係合受部
20化粧カバー(瓦棒化粧カバー)
21化粧カバーの基板部22化粧カバーの係止部
23断熱層24断熱材25防水シート
26スタイロックアンカー27刺し爪28逆爪29基板
30雨水樋31座金

【書類名】要約書
【要約】
【課題】
風圧、気温変化等による外装板の変形、離脱等を抑制する。

【解決手段】
躯体2の外面を縦方向に細長く複数に区分した形状の輪郭に対応して吊子台座13が固定され、上向きL字状に屈曲した側縁部5を有する外装板4が隣接する吊子台座13間を覆って配置され、外装板4の側縁部5が縦方向の複数個所において着脱可能な固定金具7で固定されている。吊子台座13の幅方向中央には、両側外向きに突出し、端部側が下方斜め内向きになるように屈曲形成された係合受部19を有する瓦棒通し吊子17が固定されている。瓦棒通し吊子17には、係合受部19の屈曲部位に対応した部位で下方斜め内向きに屈曲し、引き続いて端部側が下方斜め外向きになるように屈曲した係止部22を有する瓦棒化粧カッパ20が被せられている。瓦棒化粧カッパ20は、係止部22が係合受部19に弾性的に係合し、瓦棒通し吊子17に着脱可能に装着されている。
(選択図)図1

図1
図2
図3
図4
図5・6
図8・9
図10・11